封じ手について



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先日、将棋の名人戦第四局の一日目の封じ手は長考になった。予定時刻を50分近く過ぎて封じたのだ。

名人戦は一局を2日かけて行われる。対局者はその前日から入るから滞在は三泊四日である。二日目は対局が深夜に終わる事もあるから、次の日の朝に帰京する。対局前日の午前中から入り、準備とか前夜祭をやって対局である。準備と言うのは部屋を見たり、使う駒や盤の選定もある。名人戦ともなると駒にも気を使う。プラスチックで合板の将棋盤と言う訳にもいかない。大抵将棋盤の裏に対局者がサインしたりしてプレミアがつく。もちろん駒も一級品だ。駒は書体などもあり、気にする棋士は結構多い。一度NHK杯で駒の交換を見た事がある。収録前に棋士からクレームがついて交換したらしい。テレビ対局では珍しいのでNHKが対局前に説明していた。

中継などカメラが入る場合もある。前日にカメラテストしてチェックをする。棋士も気になるのでカメラ位置など打ち合わせをする。そう言うことを仕切るのが「立会人」である。たまにあるのが部屋の温度とかである。暑がりの棋士と寒がりの棋士ではちょうど良い室温が違う。そんなことも調整するのが「立会人」なのだ。

名人戦は持ち時間が9時間である。これは一人当たりなので対局者二人で18時間である。途中で食事休憩を入れるので20時間~22時間である。食事は昼食と夕食の二回の休憩があるからだ。実際には秒は消費時間にならないので一手一分程度の誤差が出る。120手とかだと120分、2時間程度伸びるのだ。「一分将棋」と言うのは持ち時間があと一分で一分以内の秒は入らないので「一分以内で指す」将棋の事を言う。持ち時間を使い果たした、終盤の緊迫した場面でよく起きる。熱戦になって両方一分将棋と言うもある。持ち時間は使い果たしているので、当然二日目の深夜である。

なので当然一日では終わらない。中断して翌日再開である。その手続きが「封じ手」である。中断なのでまず手番がある。先手、もしくは後手の手番から再開である。でも単純に再開すると「自分の手番で中断した方が有利」になってしまう。再開まで考える事が出来るからだ。なので一日目の最後の手を紙に書いて「封じる」のだ。翌日再開の時に開けて再開する。封じた手は変えられないから公平である。その手は持ち時間内で考えて指した手ある。相手も封じ手を見ることが出来ないから有利になることもない。もちろん立会人も知らない。知っているのは封じた本人だけだ。

名人戦では封じ手は一日目の午後6時30分過ぎたら、手番を持っている側が封じなければならない。これは規定でそうなっている。今回をそれを50分過ぎてから封じた。

言っておくがこれはルール違反ではない。「封じなければならない」のであって「6時30分に封じろ」ではない。長考したければすればいいのだ。もちろん持ち時間は消費する。それだけである。手が決まらなけば長考していい。ただその手は「封じ手」となる。だから50分長考して、封じたのである。

逆に6時30分前でも「封じます」と言えば封じる事がである。「今日はおしまいにして明日続きをやる」と言う宣言である。その場合は「6時30分まで考えて封じた」とみなす。封じた棋士の持ち時間が減るのである。手は決まってるけど調子が良くなくてちょっと早めに上がりたいとか気分もある。阿吽の呼吸で6時25分あたりに封じることが多い。

時に封じるのが好きな棋士と嫌いな棋士がいる。封じられるのが嫌いな棋士もいる。封じた手が気になって眠れないとかあるのだ。相手の手なのだから明日にならなれば分からないのだが、どうしても気になる。犯人が気になって推理小説の最後が読みたくなるのと一緒だ。イライラする。そうならない為には封じるしかない。封じれば手は知っている。安心して寝れるのだ。翌日睡眠不足では対局に影響する。

反対に封じるのが嫌いな棋士は「本当にそれが最善手だったのか?」と思い悩む。もう封じたんだから、手は変えられないのだが。時間があるので考えてしまう。そして「こっちの方がよかったかも」とか考えるのが嫌なのだ。この場合は相手に封じさせるしかない。

なので封じ手も駆け引きである。封じられるのが嫌な棋士はちょっと早くても「封じます」と言えば封じれる。逆に封じるの嫌な棋士は6時29分まで待って「いきなり指す」一分では大抵は指せないからだ。時間を過ぎれば相手が封じなければならない。これは規定である。封じなくて良いのだ。

こういうのは棋士の付き合いで、棋士同士も知っている。だから相手が封じるのが嫌いなら、わざと封じさせてたり。相手が封じられるのが嫌いなら、先に封じてしまう。これでイライラして「夜寝られなかった」とかしてくれれば儲けものだ。ただでさえ翌日は決戦なのだから興奮して眠れない。普通でも眠れないのだそうだ。窓の外の相手の部屋の明かりが付いているの見て「相手も寝れないんだな」と安心して落ち着いたら眠れたと言う話もある。

封じ手にも勝負の駆け引きがあるのだ。

この辺締めたいと思います。

長文を読んでくださって、ありがとうございました。

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