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トランプと関ケ原と詰将棋


トランプが大統領になってアメリカが大騒ぎである。

メキシコの壁を作るだの、移民は禁止だの。大統領候補の時からその言動は過激だったが、まあ日本にも影響はあるだろうね。

これからトランプが何をしでかすかは分からないが、それはそれとして、今回は大統領選挙について書いてみたいと思う。

トランプは最初は泡沫候補だった。それがあの暴言で注目され、ついには本選挙でも勝って大統領になるのだが、これをマスコミは予想できなかった。

日本で予想できたのは木村太郎くらいで、的中した論客はドヤ顔で「隠れトランプ支持者がいた」とか「世論調査の終焉」とか言っている。まあたしかにそう言う面もあったろうが、小生は違うと考えている。

それは「得票率ではヒラリーが勝っている」と言う事実である。

獲得選挙人   トランプ 304           ヒラリー 227
勝利州数      トランプ 30 + ME - 02     ヒラリー 20 + DC
得票数          トランプ 62,979,636       ヒラリー 65,844,610
得票率         トランプ 46.0%        ヒラリー 48.1%

得票数も得票率もヒラリーが勝っているのだ。民主主義の原則ならヒラリーが大統領と言うことになる。だから暴動や混乱が起きているのだ。その点ではトランプの支持率が低いのも頷ける。得票率がそもそも低いからだ。

参考として1976年の大統領選挙見てみよう。


獲得選挙人     カーター 297           フォード 240
勝利州数      カーター 23 + DC      フォード 27
得票数         カーター 40,825,839    フォード 39,147,770
得票率           カーター 50.1%       フォード 48.0%

トランプとカーターが大統領である。そして得票率は2ポイント程、差がついている。にも拘わらず、トランプが勝ち、ヒラリーが負けたのだ。

それは大統領選挙が「州ごとに選挙人を取り合う」と言う、特殊な選挙制度による。

大統領選挙は大統領を選ぶ選挙ではない。選挙人と言う「州の選挙代表者を選ぶ選挙」なのである。もちろん代表者はあらかじめ候補者を表明するので問題はないが、問題は「州ごとの集計で勝った方が全ての選挙人を取得する」と言う方式である。

つまり「得票ではなく、州ごとの勝敗」で決まるのだ。


野球で言うなら、10対1でも2対1でも「負けは負け」で「得失点ではなく勝ち負け」が重要なのだ。なので別に隠れトランプ派とか関係なく、要は「トランプは効率良く勝ち、ヒラリーは選挙戦術で劣った」だけなのだ。

 

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そこで関ケ原との関連だが、確かに家康は勝って天下を取った。でも戦力は西軍の方が多く、しかも周囲の高台は西軍に押さえられている。所説あるが、西軍が8万3千、東軍7万5千が通説である。そして布陣であるが、赤が家康、青が光成、オレンジが裏切った小早川である。

そして戦場では地形が重要なのは古今東西共通の常識である。

戦場では「上から見下ろされる」のを極端に嫌う。視界が開けて戦場が俯瞰できるし、何より威圧感もある。逆に攻める方は下から上がらなくてはならない。
平城の天守閣も、言わば櫓で、軍事的には上から俯瞰するために建てられる。平地だから俯瞰できる場所がないからである。

それくらい、高地を制圧するのは重要なことなのだ。

戦前、ドイツ軍のメッケルがその布陣を見て「西軍の勝ち」と言ったそうだが、メッケルで無くても軍事的には西軍の優位と言う判断は揺らがないだろう。そう判断するのが普通なのだ。仮に多少西軍の多少兵力少ないとしてもこの優位はそれ以上である。現に東軍は昼過ぎまで西軍に押されていたのだ。それは高地を制圧していからである。

もちろん、小早川の裏切りや毛利の日和見などは重要だが、それは、確実なものではない。家康が実際に鉄砲を小早川に打ちかけたかどうかまでは分からないが、いらだっていたことは事実である。それは後方にいた家康が昼過ぎに前線で出てきたことからも分かる。それは前線の状況が芳しくなく、状況把握と叱咤のために出てきているのだ。

反対に光成の西軍はかなり余裕があった。大阪には輝元の本隊が常駐し、大阪からの毛利元康の援軍もその前日に滋賀の大津城を陥落させている。明後日には関ケ原にやってくるだろう。それに引き換え家康は秀忠の別動隊は上田城で真田に引っかかって音信不通。いつやってくるかもわからない。大局的にも西軍が押していたのだ。

そして家康が計算ずくで出てきた訳でもない。先に動いたの光成の方でかねてから旗色不鮮明で挙動が怪しかった小早川が関ケ原に布陣したため、監視のためにも光成は関ケ原に布陣する必要があったのだ。家康はそれに呼応したに過ぎない。

家康はそのままでは各地から西軍の援軍が終結してジリ貧だから危険を承知で合戦したのだ。そして家康は勝たなければならない。日没で再試合ではダメなのである。勝とうが負けようが当日で決着をつけなければならない。引き分けになったらもう勝つチャンスは来ないからだ。毛利や小早川がいつ西軍に付くかも分からない。実際家康は後方にも部隊を配置している。万が一の事態に備えているのだ。それは毛利の日和見が完全な確約事項ではないことも意味している。全ては不透明だったのだ。

そう考えると小早川への脅しも納得はいく、たとえ可能性が低くても「やらないよりやった方マシ」で、だから鉄砲で脅したのである。なにもせずに負けるよりも、どうせならやるだけやって負けた方がいい。「諦めたらそれで試合終了」なのである。

そしてトランプである。選挙終盤は明らかに不利だった。激戦州を一つか二つ落としたらまず勝てない情勢である。そもそもカルフォルニアやニューヨークなどの大票田は既にヒラリーが押さえていてまず取れないのだ。世論調査の結果も悪い。

あとはもう激戦州を全部勝つしかない。選択の余地などないのである。「諦めたらそれで試合終了」状態だったのである。ここまで来たらもう理屈ではない。どのみち激戦州全てを回れる訳ではないのだ。肌感覚と勘で落としそうな州を遊説してベストを尽くすしかない。

そして、家康もトランプも賭けが大当たりして勝利した。でもそれは天運であって、どちらにしろ「ギリギリの勝利」であることには変わりはない。もしもっと楽に勝てるなら、トランプも家康もそのような選択はしなかっただろう。トランプと家康の勝因はその「肌感覚と勝負勘」でこれはヒラリーや光成のようなインテリには無いのである。

詰将棋と言う遊びがある。将棋の終盤を問題にして出して、それを解くと言うパズルのような遊びである。大抵は5手詰みとか7手詰みとか手数まで書いてある。将棋の上達法としても使われりもする。

そして、この詰将棋が得意な人もいる。プロ顔負けで解くのである。しかし、だからと言って将棋が強いかと言うと、必ずしもそうではない。序盤とか中盤ではなくて、終盤で詰みを逃したりするのである。詰将棋の問題はあんなに速く解けるにも拘わらずである。

それはパズルだからである。「詰む」と分かってるから解けるのであって、「詰むかどうか分からない」状態だと解けないのだ。肝心の「勝負勘」が無いのである。実戦では「詰ませ方」ではなく「詰むかどうか?」が重要だからだ。

でも詰将棋ではそれは養えない、あらかじめ答えが用意してあって、それを見つけるかどうかなのだから。答えの無い状態で答えを見つけ出す事はできない。それが詰将棋と実戦の違いである。

その点でみるなら、ヒラリーは「詰将棋型」でトランプ「実戦型」である。ヒラリーはマニュアル通りの選挙をした。それは出だしから民主党の本命で優勢だったからでもある。冒険する意味など全くなかったのである。しかしトランプは泡沫候補で、いつ脱落してもおかしくない。とにかく「勝ち続けなければいけない」のだ。

トランプは初めから博打なのである。選択の余地などなく、要は「勝てる可能性がわずかでもあったから、それを実行した」に過ぎないのだ。そうして賭けに勝ち続けただけに過ぎない。そこには先の読みや計算などないのである。

そして選挙結果を知っている我々はつい「物事を計算」で考えてしまう。特にこのような逆転劇はそうである。「勝者はあらかじめ分かっていた」と考えてしまうのだ。そして「トランプには実は秘策あった」とか考えてしまうのだ。そんなことは無い。楽に勝てるならその方法の方がずっと楽だからである。

そして予想する方も当たってから「実は深い読みがあってね」とかドヤ顔する。後知恵である。本当に「隠れトランプ」が多数いたなら、ヒラリーの方が票数が多いとかありえんのだ。トランプももっと楽な方法を選んだに違いない。

人間はつい結果から「あくまでそれが必然であった」かのような論理を作りたがる。でも本当は違うと言うのが今回のお話。

この辺で締めたいと思います。

長文を読んでくださってありがとうございます。

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